亥の年よ/なかがわひろか
後悔無く
走り切りたかった
お前の脚をもぎ取ったのは
少しでも腹を満たしたかったから
お前の脳みそも
お前の体も
全てを食い尽くさないと
俺たちは生きて行けなかった
だけど
あの時腹の中にあった
小さな命は
俺がそっと
掬い取っていたんだ
今お前の子供が
大きな一歩を踏み出そうとしているよ
今年は
何の弊害もなく
ただただ思いっきり
走らせてやろうと
思うんだ
お前の分まで
やせ細って
骨と皮になっちまうまで
とことん
走らせてやろうと
思うんだ
そしてその後を
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