紅色のあいつ/愛心
 




私は
あいつを
殺してしまった。



クラスの皆はあいつの名前を忘れ
私もあいつとしか
覚えてない。





帰り道

私はあいつと居合わせた。
赤い髪が夕日に反射して
炎のように輝いた。
私は眩しくて、つい顔をそむけた。
「なぁ」
久しぶりに聞いた、あいつの声だった。
「何?」
私は聞き返した。緊張で声が少し高くなる。
あいつの赤い唇がゆっくりと動いた。
「気をつけて、帰れよ」
それだけ言ってあいつは
私に向かって小さく手を振った。
「分かってる・・・・もん」
私はそれだけ言うと走って帰った。



家の玄関前に着くと、私はゆっくりと息を整えた。

何故逃げるように帰ってしまったのかは、私にも分からない。

ただ、あいつの手に光る紅色の指輪が
異様に綺麗で
顔が赤くなってしまったからかもしれない。

戻る   Point(1)