あいなきせかい/大覚アキラ
 
はじまりは
とても単純なことだった
猿に似た生き物が
仲間の餌を奪おうとして
その喉笛に噛み付いた

立ち上がって歩くことで
両手が自由になったその生き物が
最初にしたことは
足元に落ちていた何かの太い骨で
仲間の頭蓋骨を殴って叩き割ることだった

雷が落ちて朽木が燃え上がり
猿に似たその生き物は
しばらくは炎を恐れて遠巻きに見守っていたが
やがて燃えている枝を拾ってくると
それを振りかざして弱い者を追い回した

すべての知恵は
暴力と密接に結びついていて
猿に似たその生き物は
賢くなればなるほど
容赦なく暴力的になっていった

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