わたしがまだ色になまえがあることなんて知らないころ/八月のさかな
ずっとむかし
わたしがまだ、
色になまえがあることなんて知らないころ
わたしはいまよりずっとたくさんの、
色がみえていた気がする
あれは赤
これはあお
それはみどりで、これはしろ
そんなふうに、
目に見えるいろをなまえで呼んだりできないころ
虹は十色にも百色にもみえ
雲はかならずしもしろではなくて
海はどこまでも無限のひかりをはなっていた
知ってしまったいまとなっては
そんな気がする、 だけだけど
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