創書日和「雪」 初雪/北野つづみ
 
生まれてはじめての雪に
子どもは小さな手を伸ばす
白い雪花をつかもうとする

指を開いても花はどこにもない
黒々とした丸い目が
さらに丸くなる

降る雪を
つかんではひらき、ひらいてはつかむ
その指には
小さいけれど精巧に作られた爪が
ひとつひとつ丁寧に植えられていて
私にはそれが
眩しい

見つめる手
やがて、雪が手の中で
溶けてしまうということが分かって子どもは
自分がなにか
悪いことでもしたかのように
少し悲しい顔をするのだろう

初雪が降る
地上に届く前に
 きよくきえるゆき
 ゆるやかなこおり
 かみのみゆき
きみがわたしの手の中で

(わたしは、どんな悪いことをしたろう?)

北風に吹かれて頬は赤くなる
息は白くなる
それも気にせずに空の上の
うえのほうから落ちてくる雪を
私は飽くことなく見ている
見続けている

二〇〇七年一月十三日


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