灰/T’s
 

泣いていたわけじゃない
でも泣いていると思われた

両腕に抱えきれない
沢山の華に潰された

泣いていないと否定をしても
心に生まれた
小波に揺れる
私の横顔は
濡れていた

小波が湖面に映る月を揺らし
揺れ動いた月は戻らないまま
揺れて
揺れて

何時の頃からか
雨音が心に響き

冷静なる情熱が
脳髄を溶かした
平静なる熱情が
感情を焦がした
静穏なる激熱が
心身を灰と化す

優しい風に吹かれて
粕かに残されていた
灰が……空へ舞った

片手に握られた
灰は……消えた

泣いていたわけじゃない
でも泣いていると思われた

泣けなくなっているのだ
泣いているはずは無いと

月へ 吼えた
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