小詩集【レトロな猛毒】side.C/千波 一也
 


三、盛夏のジーニアス


描きかけのキャンバスだから
途方に暮れても
あなたは
素足で


包まれてゆくまでの短さは
あれからずっと
丘のまま

ひたすらに眠りつづけては
そっと不思議を
暮れさせて


涙はいらないか、と
あふれた言葉はしのげない雨

陽光を知りすぎた帽子だけ
ひとりを慣れて
扉に寄り添う



おろかで居たかった
誰の真似でもなく
ただおろかで
居たかった



瞳はいつでも空のなかにあって
温度を生みだすことが
腕のちからで

嘘などはどこにもない夏
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