田園であり 事実ではない/奥津 強
東に その 稲は 埋もれている
私の 髪を 切れ
一束を 稲に 添えろ
やがて 月夜になり
方角は 星どもが 決める事
やけに 質素な 稲が 敬語を 使う
光が 東に 走る
巨大な 水平線だ
私らが 無知である 証拠
現存した 事実は 常に 悲観的にも見える
なので 稲は 何らかの 仏ないし
如来が 来ては もぎっていく
ああ 片目のない 仏達よ
稲を もぎ取れ
私らには 生涯 収穫がない
食べていくだけの 知識も 技量もない
常に 前へ 進むと 如来が 来ては
私に 喪服を 着せるのだ
曰く
それは 最も 簡略化された 罵倒である
電話の音がなる やけに 遅い 速度がない
稲は 抜けたか
稲は 実は 私らの 頭に 生えているものだ
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