暮れかかる大塚駅が/nm6
 
靴屋がパラダイスだというので白熱灯に照らされる店員のおばさんを眺めている。ステレオタイプな課長は眼鏡を拭きながら鳴る携帯を落として申し訳ありません大変申し訳ありません。スターバックスラテのショートサイズ、フォー・ヒア。フォー・ヒア。コーヒー豆がマシーンにセットされる音が雨になって降り積もる春の果てしなくなまぬるい夕暮れ。


必要なのは、ここから飛び出す方法だ。


ぶら下がる街灯が髑髏のような果物で下向きに投げ出された恋文。空の青は照明に吸い込まれて短針の速度でグレーになる。棒状の駅。歩く人々は皆フランチャイズなスマイルで脂ぎった喧騒からしんとした道へ抜けていく。フォー・ヒア、ショー
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