最後の宿泊/降墨睨白島(furusumi geihakutou)
 
確かあった『戸惑いの間』
何人入る宴会場か分からないので
後で案内人に質問しよう
『戸惑いの間』の隣が
『戸惑いの間の隣の間』で
何人入る宴会場か分からないから
次に出くわす仲居さんに
質問しよう
何となく元ホテトル嬢の仲居さんに
会いそうな気がする
そうだ『戸惑いの間の隣の間』の隣は
『サルトルの間』らしい
『さりとての間』と
『猿鳥ノ間』に挟まれて
肩身の狭いインテリ経営者のようだ
ああ、歩き疲れて
いつしか迷い迷いして
気がつくとドアの開いた客室
ああ、それにしても
『猿鳥ノ間』の『ノ』は
『の』ではなくて『ノ』なの
ああ、驚いた
人生最後の日の夜に
有名ホテル型旅館に泊まろうと
俺が思いつくなんて

女だ
仲居さんだ
仲居さんは振り返り
のっぺら坊で、最初のあたり
何を言ってるか分からなかった
が、
『こんな顔だったかい?』
と、言われてもさあ
なぜ、のっぺら坊なのに
話せるのかな
不思議
なぜ!
『猿鳥ノ間』の『ノ』は
『の』ではなくて『ノ』なのだ
まあ、いいか
どうせ朝までに俺は
首を吊る
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