エイフェックス・ツイン、永遠に(改稿)/由比良 倖
 
 沙恵は絶望しながら踊っていた。煙草を吸いながら。エイフェックス・ツインの暴力的に鮮やかな、白い花のような音楽が拡がる。絶望は居心地がいい。絶望は人を強くするかも知れない。どうなってもいい。どうせ何も出来ないのだから。沙絵は人のいない世界に入り浸っている。何かが気になるのは、人との間に希望があるときだけ。
 ウォークマンを操作して音楽をオービタルに替える。海の表面に漂う光の霧のような音楽。……もし、私に音楽が作れたらどうだろう? 沙恵は考える。ツマミを回したり、ギターを弾いたり、画面上のシーケンサーに音の出るカラフルなバーを配置したりする。きっと楽しいことだろう、と思う。
 沙恵は先週、三十歳
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