メモ/はるな
 
すこんと抜ければよかったものを、しぶといかさぶたみたいにしがみついてきたない。そういう蓋、風向きでいくらでも変わる。わあわあ言いながら、生活していかなければならないとおもったから。自分の足で立って、立ってるだけじゃなくて歩いていかないといけないと思ったから。世界とわたりあわなければならないと思ったから。だから蓋を開けた、それでそれからずっと動悸がおさまらない。
かんたんな数字もなかなかおぼえられないで、人の顏ももちろん覚えられないで、でも電話をとると嘘みたいに言葉が出てくるんだけど、切った瞬間にはもうなにを出したか覚えてない。頭をしぼるみたいにして、線だらけのメモ帳から、情報をつなぎあわせてシー
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