水の行方/ホロウ・シカエルボク
 
その日、二ヶ月に渡る療養の挙句に会社に見捨てられた私は、まっすぐ家に帰る気にもならず、電車にも乗らずに当てもなくぶらぶらと歩いていた。田舎の高校を卒業して六年間、特別な野心も意欲も無いまま働き続けた仕事だったけれど、なんとなくそのままずっと続いていくんだろうなと考えていた。まさか、よくわからない不調のせいで仕事を失うことになるなんて考えもしなかった。内科は逆流性食道炎かもしれないと言い、精神科は自律神経かもしれないと言った。婦人科では気になるならどこか大きなところで診てもらった方がいいかもしれない、と曖昧な調子だった。本格的に調べてもらおうか、そう考えていた矢先の会社からの連絡だった。あなたは長く
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