少女と剃刀from前橋百物語/医ヰ嶋蠱毒
白衣の少女は密室で睡る。鉄格子を嵌められた方形の窓。翼を休めに来たと思しき青い小鳥の喧しい囀りが、彩りを帯びた一連の言葉として彼女の脳裏へ綴られる。砂の海、炎の山、氷の大陸。こっちにおいで。孰れも少女には想像すらつかぬ異國の光景。目を醒まし、施錠された鉄の扉を叩く。ママ、赦して、赦して。私が悪いの。パパを誘ったのは私、あの子を孕んだのも私。ごめんなさい、ごめんなさい。重い解錠の音。残飯、とはいえ食事か、さもなくばまた殴られるのか。黝い痣に塗れた幼い顔を涙が伝う。――僅かに開いた扉の隙間から鈍く光る何物が投げ込まれた。其れは?き出しの剃刀の刃。真逆、死ねということ? 少女は逡巡の末、自らの手首にソレ
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