羊の話1/由比良 倖
草原の中に羊さんが住んでいました。お日様はぽかぽかして、お空はどこまでも透きとおり、風は羊さんの羊毛をなびかせて、彼はからだじゅうで微笑していました。歌を歌いながら、「今日も世界は美しいなあ」と羊さんは思いました。
お腹が空いたので、草を食べていると、権力羊がやって来て、その様子を見て一瞬牧歌的な笑みを浮かべ、そのあとすぐにまた険しい顔に戻り……何しろ権力羊は寝不足なのです……「いい天気だね」と羊さんに声をかけました。羊さんは「ああ、そうですね」と答えたきり、また草を食べ始めたので、権力羊は少しむっとして、しかし努めて明るく「君は、仕事は何をしているんだい」と問いました。羊さんは、草を食べるのを
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