メモ/はるな
電気ポットの内側に、「ここまで」という表記があり、いつもそのずっと手前までしか水を入れられない。なぜきちんと水を満たさないのか、と言いながら、夫がコップから水を注ぎ、ぴたりと「ここまで」に合わせて、蓋をしめる。
「ここまで」入れようとすると、必ず必ず、それを上回ってしまうからだよ。と言い訳するわたしを、理解しない顔で見ている夫。
花を買い、籠を買い、本を買い、靴を買う。眠りが浅く、夜のうちに何回も目を覚ます。株分けをした草たちが勢いよく伸び、娘の髪と手足も競うように伸び、わたしは何度も髪を切る。桜なんて遠い昔で、夏至だって通り過ぎ、紫陽花の色が変わり、蓮の蕾がはちはちと肥える。息苦しい、夢のなかで、何かに触ろうとしている。
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