卵化石/田中修子
ね、みんなは、恐竜だったころをおぼえている?
むかし博物館に家族全員を、父がつれて行ってくれた。幸せな会話で窒息しそうな電車、はやく終わらないかな。
父はティラノサウルスが好き。わたしはトリケラトプスが好き。
そのころ母がとっていた子ども新聞に、トリケラトプスの男の子と女の子が恋に落ちて、滅びていく恐竜世界を冒険するまんがが載っていた。火山がドカンと噴火して、灰がおちて、空がどんよりと曇って、濃いみどりの羊歯や、大きなイチョウやソテツが、どんどん燃え上がり容赦なく枯れていく。二匹の両親は、二匹を守って死んでいった。寒くて寒くて、二匹はからだを寄せ合いながら、まだどこかに残ってるあったかな
[次のページ]
戻る 編 削 Point(15)