雨はきらいじゃない(落ちの無い話)/山人
 
 大白川登山口に着くと雨となり、当然誰も居なかった。レンタル簡易トイレがのっそり立ち、周りには雑草やらススキが生い茂っている。雨は次第に本降りとなり、雨具を着る。
今日を逃がすと次回はいつ行けるかわからない気がしたので、雨でも行くこととしていた。雨は嫌だ。ザックにカバーをし、自分の体も雨具で覆わなければならない。歩き出せば、すぐ自らの熱で皮膚は蒸れ、汗が噴出してくるに違いないのだ。だが、意外に悪くない。体調に不安があったが、そこそこ悪くは無いなと思いながら登る。
二〇〇メートル近い標高差を登ると視界が開ける。未だ健康とは言えない体を石の上に投げ出せば、傍にヤマツツジの群落があった。雨の水滴がふ
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