感性で読みとく現代詩:「夏の光に」/あい
 
夏の光に

夏がきても病気のように冷たい光はあった。
それはぼくのなかにあった。物のなかにあった。
いたるところにあった。
空気が重くなり、雨がふりはじめた。
子どもたちは手のひらを雨のなかにいれ、雨の冷たさを受けとめた。
モーヴ色の告白からやつれた影があらわれるように、
ぬれている草のなかでじっとしていた、きみの心は。
日がおちてもそこにいた。世のなかの鍵穴から砂がこぼれはじめた。
ぼくはきみの心をつつむきみのからだをみつけた。
雨の匂いをいっぱいふくんだ髪毛をべったりと首に巻きつけた。

岩切正一郎『秋の余白に』より


 タイトルにある「夏の光」とはたぶ
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