髪とちっぽけな独占/くみ
『髪とちっぽけな独占』
「髪、もう伸ばさないのか?」
恋人にそう尋ねてみたのは、折角少し伸ばした綺麗な髪型をもう少しだけ見ていたかったからだ。
恋人の髪はとても柔らかく、艶々としている。自分の髪質はそこまで柔らかくはないのからだろうか少しだけ羨ましくも感じた。
髪を撫でてみると本当に自分の手に絡み付き、馴染んでいる髪は、自分だけのお気に入りだった。校則に縛られていた高校の時とは違い、大学生になって自由を手にしてからの恋人はやけに艶っぽくなった。今の姿も勿論好きなのだが、昔の可愛らしい姿も好きなのだ。
だからこそ迷う。2つ共に自分だけの物にしたいのに、1つに決めなければいけない
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