10/はるな
宝籤はもうずいぶんりっぱな犬になった。しっぽのわずかな先と、胸もとと、それから腿のうしろにも毛羽立つような白い毛が生える、黒い犬だ。しっぽは太くてたっぷりしていて、よく動く。
雨のあがったきょうみたいな日には、宝籤は日のいちばんあたるリビングの窓の右はしへ陣取って、湧き水のような寝息をしている。体が大きくなっても、ちょうちょの影にもまだいちいち怯える、かわいい宝籤。
ひと月の予定で実家へ帰ってきてから二十日あまり過ぎて、まいにち眠ってばかりいるけれどおそろしい夢ばかりみる。おそろしい夢というのは都合の良い夢だ。手垢もついていない、ほこりもかぶっていない、そういう「続き」の夢。その内
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