しんちゃんとてすと/自転車に乗れない女の子
 
「最後の問題は答えを書いた人全員に丸を上げます」

 先生はそう言って、その能面のような顔にくっついている唇を、申し訳程度に上げて微笑みました。

 しんちゃんは不思議に思いましたが、先生の暴力的な笑みが怖くて黙っていると、隣の席の友子ちゃんがすっと手を上げて、
「あ? なんで全部正解なんだよ?」
しんちゃんの気持ちを読みとったように質問をしました。

 先生は友子ちゃんに一瞬だけ般若のような顔になり、それからまたにっこり笑うと言いました。


「答えはいくつもあって、ふたつは無いからです」

 しんちゃんは友子ちゃんが睨まれたのに、自分まで喉元に刃物を突き付けられたよう
[次のページ]
戻る   Point(4)