人魚/ホロウ・シカエルボク
では、ぼくの友人の話をします。名前を仮にNとしておきます。明るい、いいヤツでした。Nの実家は県境の山のすごく奥の方で、高校のときから市内に出てきてひとり暮らしをしていました。生物が好きで、生物部に所属していて、部室でも、六畳一間の自分のアパートでも、珍しい魚やら、カメやら、ハムスターやらの世話をしていました。一日のほとんどを、水槽やゲージの前で過ごしてるみたいなヤツでした。ぼくは生物とかには人並みの興味くらいしかなく、どちらかと言えば面倒くさいとか、死んでしまったら嫌だろうなとか、そんな理由で敬遠してるという感じでした。けれどNとは不思議と気があって、かれがなにかに餌をやったりしている以
[次のページ]
戻る 編 削 Point(4)