秋葉原の幻/番田 
 

秋葉原は今日もぼんやりとした欲望が渦巻いていた。かつて起きたおぞましい事件のことも忘れて、僕は歩いていた。まるで夢を見ているかのように歩く人たち。ビルは空の色で空は夏の色をしている。僕もうしろめたさを抱えたまま、行く当てもない。中古のパソコン屋をのぞくと、かつての残骸のような商品たちが並んでいた。この街で変わらないのは、僕と表通りのドーナツ屋ぐらいのものだろう。メイドは昨日までいた娘が姿を消していた。そんなことを考えていた。現代詩フォーラムが頭に浮かぶ。それについて何を思うべきだろう。通りのゲームセンターが姿を消したら、この街は新しい方向へ姿を変えていくだろう。ファミカセの店が姿を消したように
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