狐火/オキ
 
 
 森の入口には、狐が腹這いになって寝そべっていた。
 私が森に入ると同時に、狐は見えなくなったが、行く
先々で、炎のようなものが、私の周辺を漂っていた。
 淡い狐色が、橙に染まっていったり、色褪せた狐色に
なったりした。
 こんなものを家に連れて帰るわけにはいかないから、
「狐よ、立ち去れ!」
 と叱りつけた。
 電車に乗っていると、周りの乗客がそわそわ落ち着き
なく、私の方を見るので、まだ狐がうろついているのか
もしれなかった。

 最寄の駅で電車を降りると、馴染みの酒場に入って、
いつもの樽酒と煮込みの他に、厚揚げを注文して、
「厚揚げは、狐色に焦げ目が入るく
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