あずきの恋人 (最終回)/たま
 
 鈴木さんと、大王さまはスロープに向かって、ゆっくりあるいて行った。そうして、青白い灯りのなかに立って、わたしに手をふってくれた。
 さようなら……。
 わたしもちいさく、手をふった。

 あかるい星空に、灰色の円盤は音もなく吸い込まれて行った。
 ちいさな、ちいさな、オレンジ色のひかりの輪をひとつ、地球に残して……。


 夏休みはきょうまで、あしたから二学期がはじまる。
 朝からとてもいいお天気だったけれど、わたしはどこにも出かけるつもりはなかった。部屋の窓もドアもおおきく開けて、扇風機をまわして、首にタオルをまいて絵本を描いていた。あしたは、由美ちゃんに絵本をみせるねって、
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