本と神田とジジイ/ドクダミ五十号
あのですね「救荒食物便覧」と云う書物がありまして、恐ろしく高価だったです。
なんでそれを読まねばならなかったか。其れについて少しばかり述べましょう。
わたくしは小学校入学以前の年齢であったと記憶しておりますが、母親の実家に
連れられて行ったわけです。寝台特急などは高すぎて無理だったのでしょう。
そのころは慣習として床油で尻を汚さぬ様に、自由席の床に新聞紙を敷いて座ったり
寝たりしたものです。夜行です。白白と夜が明ける頃に本州の北の端っこに近い駅に
到着します。可愛らしい駅です。隅の方に台測りなんぞがあります。物をどこそこ止め
で送る事が出来たのです。客車とは別に、貨物専用の貨車が接
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