壁/川上凌
雨が降っていた。
秋晴れがさんざ続いたのをかき消すかのような、どしゃぶりだった。
わたしの住む地区には、いわゆる障がい者の人たちが通う学校が沢山ある。
聾学校・盲学校・養護学校…最近では、盲導犬もよく見かけるようになった。
いつものようにバスに揺られていると、通路を挟んで左隣の席に、養護学校の女の子が座っていた。多分中学生くらいで、足をぶらぶらと投げ出して、鼻をほじっている。
それを見た後ろの座席に座るおばさま達が、
「いやぁねえ…」
「ああいう子がいるから…」
などと小声で話しているのが耳に入ってきた。
言ってあげた方がいいのは分かったが、言えなかった。幸い、す
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