台風のこと/はるな
台風という言葉はわたしをなつかしい気持ちにさせる。と思って、でも、よくよく考えたら、わたしは非常に多くの言葉になつかしい気持ちにさせられる。たとえば読書、と聞いても、小学生の休み時間のほとんどを過ごした四角くて窮屈な図書室を思い出し懐かしいし、あるいはパラレル、などと聞いても幼いころ見たアニメの色彩を思い起こして懐かしくなる。もうそのアニメの名前は忘れてしまったけど、たしかパズルを買ってもらった。まだ厳しかった母が、パズルを並べ終えるたびにぱちぱち手を叩いてやるじゃないと言ってくれるので何度でも崩しては並べた。じきに母は喜ばなくなったがそのパズルは捨てられなかった。今でも実家にあるはずだ。
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