いろいろな感じについて/はるな
 
空がすこんと抜けそこから夏と秋とが入れかわって鱗雲。日差しはどことなく丸っこくなって色もなんとなく赤っぽい、カーテンにハンガーのかげがうつっている、それとそれに吊るされている布たちと。
ここはほとんど幸福そのものだし、それは、絶望だ。
髪を伸ばした方が良いよと言ったのはどの人だったか、どの人もだったかもしれない、たとえば今までに寝たひとの数を思い出そうとしてみてわからなかったり、情熱のゆくえだったり、次々に妊娠していった女の子たちとか、牛乳の値上がりとか、母からの電話とか。髪を伸ばした方が良いよと言われて伸ばし始めて、でも、誰だったか。誰に、伸びたよと言えばよいのだったか。

わたしに言葉
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