オートマトンの夢/梅昆布茶
 
それは遠い呼び声だった。
かすかに愁いを帯びた紙片の様にかさこそと空気のへりを伝わって忍び寄るなにかの気配がこのところ僕の耳元にすみついているみたいに。

五感に走る刺激がなければ自らを認識できないぼくらにとってそれは宇宙に遍満した背景放射のようにもかんじられる。
あるいは存在そのものをおびやかす微熱でもあるかのように時になにかに共鳴するように高まり鋭く震えてはまた去ってゆくのだ。

今朝の眠気がまだ晴れないまま僕はカプセルに入り頭の中で親しい友に話しかけるように半透明の繭の高密度に集積された魂に要求を伝える。
ほどよい温度の流れにからだを洗われるにまかせて柔らかな夢からさめてゆく。
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