蜘蛛の糸(性善説)/オノ
ある日のことです。
お釈迦様は散歩がてらに立ち寄った極楽の池の縁に立つと、
ふとその下をご覧になりました。
ちょうどその池の下は地獄にあたっており、池の蓮の葉の隙から
罪人達が苦しみ蠢く様子が見られるのです。
するとその中に見覚えのある男がいました。
男の名はカンダタといって、生前は殺しに盗みにと大概の悪事を
幾度となく繰り返し、まっすぐに地獄へ落ちた身ですが、それでも
お釈迦様はカンダタが生涯でただ一度だけ、良心の欠片を見せた
できごとを知っていました。
カンダタがある日、深い林を歩いていると路に小さな蜘蛛がおり、
カンダタはすぐに踏み潰してやろうと足を挙げたのですが、何と
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