人間にとっての言語/番田 
 

日常の中で発せられる言葉はいつも、自分自身のことを表現することはない。ただ、広い空間の中にぼんやりと存在する響きのようなものである。道行く人はいつも、それらを思うことなく口にすることだろう。私のような人間であっても、いつも、簡易的な表現手段として言葉を日常の中で多く取り入れている。それはいつの日であっても、音楽や絵画よりも少しだけ私たちの周りにありふれたものなのである。

例えば、音楽は言葉よりも幾分抽象的な表現に用いられることが多い。日常使用されるインターフォンも、言葉自体ではなく音楽に分類されるものである。私たちの生活におけるクラクションやサイレンも似たような物なのである。それによって行動を起こさせられたり、静止させられたりもする。そのようなことに比べて言葉は非常に具体的である。しかしながら、その響きはすぐに私たちを具体的な行動に駆り立てることはないのである。


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