シクラメンのこと/はるな
季節のかわりめには、どうしてこうも感傷的になってしまうのだろう。晴れていても、雨が降っていても涙が出てしまう。
あの人はわたしのことを忘れることにしたのだろう。来なくなった連絡と、日々と。忘れることにしたのだろう。
かまうもんか、とは思わない。もっとかまってくれと思う。でもどちらにしろ―忘れることに決めたのだとしても、それさえももう遠のいて忘れているのだとしても―あるいは忘れないでいようとしているのだとしても―わたしには決められないのだ。恋はそのように、対岸にあるべきものなのだから。
きのうシクラメンを買った。銀色のきれいな鉢も。濃いピンクのちいさな株で、いまは六つ、花開いている。
シクラメンは、長くたのしめるから、いいですよね。
花屋の店員の笑顔。
長くたのしめるから。
そうなのだ。結局のところ。
たのしむことを学ばなければならない。ポネットみたいなひたむきさで。
仕事へ行かなければならない。洗濯ものが、つめたい空気のなかで、さむざむと白くひかっている。
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