橿原断片 / 耳成山/beebee
 



はるか大昔に天子が山頂にのぼり
おお我が美味し国よと祝詞を上げた山は
小さいころの遊び場だった

山の中腹には幾つか洞穴のようなものもあって
大人からは聞いたことがなかったが
幼心に群墓とも戦時中の防空壕とも考えていた

奈良の盆地では小高い丘があれば古墳であり
石組みの隙間に見える暗がりははるか太古の暗闇に繋がっている
このようなほんの小さな山の幾つかが神の降る山なのだ

そこは子供心にも不思議な町だった

夕方になるといくわかの蝙蝠が空をジグザグに飛び
大きな黒いカラスが太古からの迷い人を現代へと誘う
記憶の霞が
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