或るイメージ/佐和
町はパリだか東京だか
ときは過去だか未来だか
枯れ葉一枚ついているだけの
冬木立ち透ける枝の向こうに
買い物帰りの女がひとり
淋しい色した小さな目で空を見上げている
上半身に食料をたくさん詰め込んだ
レジ袋ならぬ茶色い紙袋と
静かな愛を抱えて
夫とも恋人とも呼べぬ
主人(あるじ)の元へ向かっている
アパートだかマンションの一室で
主人は絵を描く
女のことはこれっぽっちも頭中にあらず
一心不乱に創作に没頭している
それが当たりまえのような約束で
女は毎日の料理が日課だ
けれど女は体ひとつ分
十分に幸せだった
主人に愛してもらっているかも判らない
だが女は体ひとつ分
満たされていた
それがなぜなのか
眺めている客人にはわからない
ただ 気難しい主人が
創作に熱血没頭している間
二人はふたり部屋に満ち足りて
それぞれがたっぷりと幸福だった
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