失恋に溺れて/チアーヌ
捨て身の勢いだけで引っ越して来た初めての街は、知り合いがひとりもいないところだった。
寂しい、とかそういう気持ちは、どこか麻痺してしまっていた。誰も知り合いのいない場所で、毎日黙って暮らした。それでわたしは一向に平気だった。
でも本当は、自分が平気なのが自分でも不思議だった。
あれほどいろんなことがあったのに、それが解決することなく、ただ心のどこかが死んだような状態。あるいは、感情に強烈な麻酔でも打たれたような。
まぁでも、平気なのはきっといいことなんだろう。
わたしはただただ毎日、寝たり起きたりして日を過ごしていた。
引越の前まで、とあるクラシック音楽系の
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