下駄ばきにミニシガー/m.qyi
下駄ばきにミニシガー
二階屋で蝶を飼うよなおとこなり
というのがあった。僕はこれがとても好きだった。たいへん呆けていて、悲しかった。馬鹿な青年の目に青空と流れて行く白い雲が見えるような気がしたから。僕の想像の中ではどう見ても悲しいお話の場面のワンショットだった。そしてこの人はもう死んでいたと、そういう話だった。想像の中の蝶々はどうやってもクローズアップされなかった、衾を取り払った吹き抜きの畳の広間の薄暗い中右から左へ瑠璃の菫がひらひら落ちるようにすっと横一文字に飛んでいる胡蝶だった。そこを着物姿の男がふらふらと鬼ごっこのように後を追い、蝶は欄干を抜け空の彼方にゆっくりと登って行きそ
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