外は薄曇り、カーテンの隙間から差し込む淡い光に目を細め、髪をかきあげた。
一つ、息を吐き酒臭い部屋に溶け込んだ、雲のような意識の中で、とてもよくない夢を見たらしい。
夢は、ただ冷たかった。光った空から、氷が静かに落ちてきて、町を緩やかに白く閉ざした。
人間が氷の中で動きをやめて、目を見開いて俺を見ていた気がする。
俺は目をこすると、煙草に火を点けぼんやりと溶け始める今日を捉える。
灰皿に落ち込んでゆく灰を眺めながら、今日も散ってゆく桜を、思い浮かべた。
煙とカーテンが揺れた、窓が少し開いているらしい。
春風が、そっと酒の匂いを部屋にひいた。
当分この匂いは取れないだろう。