春風に 薫る桜と酒の香 静かに乱れる意識の中で 夢と光と花の散る/岡崎師
 

外は薄曇り、カーテンの隙間から差し込む淡い光に目を細め、髪をかきあげた。
一つ、息を吐き酒臭い部屋に溶け込んだ、雲のような意識の中で、とてもよくない夢を見たらしい。

夢は、ただ冷たかった。光った空から、氷が静かに落ちてきて、町を緩やかに白く閉ざした。
人間が氷の中で動きをやめて、目を見開いて俺を見ていた気がする。

俺は目をこすると、煙草に火を点けぼんやりと溶け始める今日を捉える。
灰皿に落ち込んでゆく灰を眺めながら、今日も散ってゆく桜を、思い浮かべた。

煙とカーテンが揺れた、窓が少し開いているらしい。
春風が、そっと酒の匂いを部屋にひいた。
当分この匂いは取れないだろう。


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