大学生活2ー医大のこと/番田
「死と繁栄」という日本語訳の四人編成のバンドらしかった。
彼女の体は黒い布でくるまれていてドクロの紋章が焼き付けてあった。僕は彼女の体を眺めながら初めて出会った日のことを思い出していた。「僕」は「彼女」の腕を握り「彼女」は「僕」の腕をほどこうとしていた。祭りばやしが聞こえる夜店の奥で「僕ら」は抱き合ったのだ。力をこめると彼女はやがて観念し、僕を抱き入れようとした。いつかの動物番組で見たことがあったような光景だった。
遠くで子供がはしゃいでいて、5年も前には僕らもあんな声のひとつだったのだ。その口のやわらかさが遠い昔のことを思い出させた。人は皆かつてのやさしさを懐かしむように生きてい
[次のページ]
戻る 編 削 Point(0)