アンチヒロインの思い出/salco
そのばあさんは二十四坪ほどの敷地に長らく独居の身をやつしていたが
ある年、解体業者を入れて古びた二階屋を取り壊させた。
更地が深く掘られて型枠にセメントが流し入れられ鉄筋が組まれると、
近隣の主婦などは
「あらあ立派なお家をお建てになるのねえ」
などと頬に手を添えやっかみ半分の立ち話をしたものだ。
そうして四ヶ月ほどで出来上がったのが白亜の直方体であった。
高さは三階建てほどあろうか、鋼鉄のドアの他は窓一つない。
煙突が一本突き出ており、よく見ると幅一間ほどの木造小屋が隣接して
いる。
近隣の主婦などは
「あらあバリアフリーかしらモダンな造りねえ」
などと頬に手を添えや
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