「冬の肌」(1/3)/月乃助
 
 北の海は凍てつく潮風がのし掛かるような厳しい冬空の下にあった。
 北上してきてやっと大洋から入り組んだ細い海峡へ、そして最後に港のある入り江に辿り着いた帆船はどれも内陸からの荷が町まで届いておらず、沖合いにただ錨を落とし所在なげに裸のマストを寒そうに曇り空に突き出していた。
 船乗り達はそれでもいつものことと、久し振りの陸の、人の住む街を少しばかり長く楽しめるとさほど大きくもない港町の、普段なら材木の切り出しに汗を流す男たち相手の酒場や一軒しかない娼家へと意気洋々に繰り出していった。
 白人の女など数えるほどの西の果ての町は、こんな時には近くのネイティブの村からきまって娘や女房達が借り出さ
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