「波の声をきいて」(3)/月乃助
 
 Sayoはもうこんなことを三年もやっていた。
 森を越えてやってきたここは、都会の雰囲気のある町で、少なくともダウンタウンには背の高いビルがあり、州立のバスが走り、スーパーマーケットで買い物ができるだけでもそうだった。
 観光が売り物の港町は、街頭に花のバスケットが下がり夏にはそれが咲き誇る。隣国からやってくる何千人も乗れるクルーザーの寄港地にもなっており、Sayoが住んでいた町とは規模が雲泥の差だし、通りすがる人がSayoのことを少しも知らずにいるというのが、たまらなく嬉しかった。
 ダウンタウンに歩いていける距離に部屋を借りたが、そこでは、水道料金がレントに含まれていて好きなだけ水も湯
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