「波の声をきいて」(1)/月乃助
「アレン、あたしはヴァージンって言ったはず。これはウォッカはいってんじゃないの?客が文句言ってるわ。子供が酔っ払ったって」
Sayoは男に大きな声を張り上げた。店の中は、コンテンポラリーのジャズ・ミュージックがうるさいほどに流れている。
「そう…だっけ。でも、ウォッカなしだったら、トマト・ジュースみたいなもんだろ。誰がそんなもん飲む気になるのかね。まったく、ここをどこだと思っているのやら」
「つべこべ言わずに、早く作り直してよ。子供が遊びに注文したんだから」
「はい、はい、すぐやるから」
流線型のカウンターの向こうで中国系のバーテンダーは、手にした蛇のようにくねったポップ用ノズルのボ
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