七人の話 その5/hon
睦夫は金星棟を目指して通路を歩いていた。そこで奈々子といっしょに、仁乃から勉強を教わるためだ。
ふと足を止めると、睦夫は二つにわかれた分岐点に立っていた。一方はまっすぐ進んで水星棟へ、もう一方は九十度左へ曲がって土星棟へ向かう通路である。
金星棟へ向かうのに彼がいつも使うのは、水星棟の一階を抜けるコースだった。しかし、ふだんは使わないが、もう一方の道から土星棟へ入り、二階の渡り廊下を使って金星棟へ行くこともできる。
(今日は、土星棟の方からまわってみよう)
睦夫は気まぐれに思い立って、ふだん使わないコースに足を向けた。
そして、土星棟の一階エントランスに入ると、性急に一段飛ば
[次のページ]
戻る 編 削 Point(0)