この世界を離れて ★/atsuchan69
 
 むかし僕は天使だった。
 せなかにつくりものの羽をつけ、そでのすこしよごれた白い服を着ていつも母ちゃんのそばにいた。
 かがみにうつった母ちゃんの顔はまるでペンキを塗ったように白く、やけにまじめな眼のしぐさで細くあやしいマユを描きながら、
「うちらが旅するのはなんでやの?」
 そう、きいた。
「わからへん」
 つめたい男爵芋を皮ごとかじりながら僕は言った。
「わからへんか? かんたんやん」
「わからへん」
「さよか。ほな、おしえたろ。オマンマ食うためや」
 それで僕は、
「ひゃくしょうは旅しよらんし、医者もお役人もうちらみたいに旅ばかりしよらへん」
 と言った。
 母ち
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