「 ナナメ。 」/PULL.
 






 傾いていた。
 傾いているので歩くごとにそちらに、ずれる。ずれるのでずれないように歩こうとすると、さらに傾き、またずれる。急いで、いる。なのでずれるのにも構わず、ずんずん歩く。歩いているとだんだん傾きに馴れてきて、そのうちにどちらが傾いているのかわからなくなる。わからないけれど、だけどやっぱり傾いているので、一歩ごとにずんずんずれて、いる。
 駅に着く頃にはもうかなり傾いていて、馴染んでいた。乗客でごった返す構内を傾きながら、傾いて先が薄くなった鞄を開け、切符を、出す。斜めになって、細い、改札を通る。
 後ろの方で、声がした。振り返ると、すっかり傾いた駅員が
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