めためたに仕事できなくって/道草次郎
 
めためたに仕事できなくって
吐きそうで
充血して
帰り
画面のむこうの娘にはさんざん怒られる
あとで
少し泣く

シンクにそのままの
ペットボトルのラベルを今日は十三枚やっとはいだ
ハイターの空ボトルは
一ヶ月以上放置されている

読もうとずっと手提げにはいったままの
中勘助の銀の匙
おばさんとの思い出を中勘助がつづった良い本で
漱石がほめた
というぐらいしか知らない

意味もわからず下痢をし
正露丸をさがし
無くて効き目のさだかでない
なぞの胃腸薬を呑む

見渡せば
乱雑さをきわめた家の居間
見晴らせば
山は見えず
外は丈高い草がボーボー

これは詩なのか?
これは断乎
詩だ

これは

なのだ
力ないが

いまここにいる
ぼくの
まごうことなき
べつに良くもない
だが
必要な
愛すべき
詩なのだ

ありがとう
詩よ
戻る   Point(5)