悴んだ/森 真察人
 
巨(おお)きな人体の
頭がこの地に
脚が 少女の碧眼のような
空にあり
遠い月から 無数の
羅針盤と目玉とが降ってくる
羅針盤の磁針も 目玉の瞳も
出鱈目(でたらめ)な向きをして
この霜地に幾重にも折り重なるものだから
僕はいったい どこへ向かえば良いのか
とんと判らなくなるのだが ただ
かの人体の顔の傍で
月光に照らされさざめく北の森が
悴(かじか)んだ手足の僕には丁度良く思われた



こんなに空気が乾いているのだ
梢同士が擦れて 発火してしまえば良いのに
月の形に欠けた木洩れ日が
この霜地を淡く照らすのみだった
折角 足をも悴
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