tailagoon/あらい
 
わたしもそうであるように
かりそめのうたのように

罅に食い込んだ
潟を
中心とする
もとは海だったが
どれも残さず
しずかに抱いておく

耳のない旅行者を思い起こさせ
あとにはなにもなかった

だから たすけて また
あたたかい うちに 手放して

通りすぎろ

かさぶたになるまえの
おとしごだけ埋め立てられた
くびすじを一周する
藪に自惚れるアパートのまえ
とおく見守ることができたなら
過ぎる鼓のうら、砂粒をとびぬけて
握りしめずに、ひらいた手でわたれ

引かれた街灯がよるを拒み
手首よりもさきに折れ曲がり
色褪せた蟻がぬるまゆを受けて
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