tailagoon/あらい
わたしもそうであるように
かりそめのうたのように
罅に食い込んだ
潟を
中心とする
もとは海だったが
どれも残さず
しずかに抱いておく
耳のない旅行者を思い起こさせ
あとにはなにもなかった
だから たすけて また
あたたかい うちに 手放して
通りすぎろ
かさぶたになるまえの
おとしごだけ埋め立てられた
くびすじを一周する
藪に自惚れるアパートのまえ
とおく見守ることができたなら
過ぎる鼓のうら、砂粒をとびぬけて
握りしめずに、ひらいた手でわたれ
引かれた街灯がよるを拒み
手首よりもさきに折れ曲がり
色褪せた蟻がぬるまゆを受けて
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)